商品の供給が追いつかない苦悩
土居さんは現地販売などで販路を拡大してきましたが、商品が足りなくなりもどかしい経験を繰り返してきました。
ニンニクは年に1回しか収穫できないため、需要に供給が追いつかないのだそうです。
ある取引先と契約したものの2、3ヶ月で在庫がなくなってしまい、注文を受けているのに商品を納められず損害賠償の問題まで発展したこともありました。
「全国に供給できる量を栽培するには、ひとりふたり増やす程度ではとても追いつきません。
最低でも30人は必要ですね。ニンニクは全部手仕事なんです。ひと粒ひと粒、土をきれいにしないと売れません」
現在は無理に販路を広げることはなく、商品をお届けできる範囲で販売を行っているそうです。
ニンニク農家のなり手が少ないのも、供給不足の原因となっています。
若者のなり手がおらず、高齢化でやめていく農家が多いのだそうです。
黒ニンニクを工場から始めようとすると最低でも5,000万円はかかり、工場を少しを大きくしようとすると、億単位の資金が必要になるのだそうです。
「日本のニンニクの生産は減っています。黒ニンニクはたくさん流通していますが、国産のニンニクはほとんどないのです。黒ニンニクは乾燥させてきれいに皮を取ってそれから売るのですが、全て手仕事。そうすると費用も時間もものすごくかかります」
後継者不足は深刻な問題だと土居さんは話します。
「ニンニクは植えて収穫するまでに9か月かかります。10月に植えて初夏に収穫するまでずっと”お守り”をしなくてはいけません。
普通の野菜でしたら植えて2,3ヶ月で収穫できますが、ニンニクはその3倍かかるんです」
ニンニクは湿気に弱いため、雨にも注意が必要だといいます。
「日本には雨季があります。初夏になると雨で気温が30℃くらいまで上がります。
その暑さの中雨が降ると、ニンニクが腐ってしまうんです。これをいかに腐らせず収穫するかというのが大変です。
5月の終わりから6月の半ばまでの間で見極めをして、1週間で掘らなくてはいけません。全部手で収穫しなくてはいけないので、人手が必要です」
収穫したニンニクを黒ニンニクにするために乾燥させる工程は、工場へ出荷前に土居さんが行っているそうです。
「蒸し焼きにする前の乾燥の工程でも非常に技術がいります。
高い温度で乾燥させると消えてしまう成分があります。ですので自然の環境で乾燥させるのですが、これがとても難しいのです」
ニンニクを栽培・収穫するだけでなく、工場へ出荷するまでは気が抜けません。
土居さんのニンニク畑